「この工種の単価は?」と聞けばAIが過去の実績から即回答。公共工事で儲かる会社になるための原価管理術を解説します。
公共工事とは何か、参入に必要な経審・施工管理技士の新受験資格のポイントもQ&A形式でまとめました。
こんにちは。船井総研の伊藤 遥己です。
資材価格も人件費も上がり続ける一方で、工事の請負金額はなかなか上がらない。建設業界はいま、かなり厳しい状況にあります。
そうしたなかで改めて注目されているのが、インフレに強いビジネスモデルである公共工事です。国が主導して労務単価を引き上げているため、公共工事では利益を取りやすくなっています。
ただし、受注単価が上がっても原価管理が追いつかなければ、利益は残りません。
そこでカギになるのが、「この工種の適切な単価は?」と聞けば、過去の実績データをもとにAIが即回答してくれる仕組みです。
- 公共工事とは何か、なぜ儲かるといわれるのか
- 利益を守るためのAIを活用した積算術とはどのようなものか
- 公共工事に参入するには何を押さえておけばよいのか
こうした疑問に、Q&A形式でお答えします。
▼本コラムの内容は動画でもご覧いただけます
公共工事とは?インフレに強いビジネスモデルといわれる理由
Q. 公共工事とは、建設会社にとってどのようなビジネスですか
公共工事は、国が主導して労務単価を引き上げているため、インフレに強いビジネスモデルです。
公共工事を発注する際には、設計上の職人の賃金として「労務単価」が使われます。国はインフレ率なども加味してこの単価を引き上げています。そのため、物価が上がる局面でも工事金額が上がりやすいのです。
Q. 公共工事の労務単価はどのくらい上がっていますか

最新の2026年度の労務単価は、全国・全業種の平均で25,834円です。前年比で4.5%上がっており、14年連続の上昇となりました。
平成24年と比べると94%の上昇で、ほぼ倍の水準になっています。
Q. 民間工事と公共工事では何が違うのですか
民間工事の価格は企業同士の交渉で決まりますが、公共工事は国が主体となって単価を引き上げています。
民間工事では、値上げをお願いしても交渉が通らないことが多くあります。これに対して公共工事は、国の主導で単価が上がっていきます。この違いが、公共工事がインフレに強いといわれる理由です。
公共工事は儲かる?利益を確保しやすい3つの仕組み
Q. 公共工事の「最低制限価格」とは何ですか
最低制限価格とは、公共工事の入札で設けられている失格ラインの金額です。この金額を下回って入札した会社は、どれだけ安い金額を出しても受注できません。
利益率の低い工事を排除するという考え方に基づいたルールで、過度な値下げ競争に巻き込まれにくい点が公共工事のメリットです。
Q. 公共工事では営業や広告のコストがかからないのですか
公共工事は、販売促進費用がかからず、属人化もしにくいビジネスモデルです。
営業担当者を雇って案件を獲得したり、ホームページやチラシに広告を出したりして受注するビジネスではありません。
資格や実績といった会社の仕組みで受注していくため、販売促進のコストがかからないことも大きなメリットです。
Q. 公共工事は落札後に金額を上げることができるのですか
公共工事は、落札後でも金額を上げられます。
受注した時点と工事が終わる時点とで、資材の高騰によって金額が変わってしまうことも少なくありません。
公共工事には「インフレスライド」というルールがあり、工事中に物価が上がった分を加味して、最終的な金額を請求できます。
民間工事では受注者側の都合で値上げすることが難しいため、この点も公共工事に取り組む大きなメリットのひとつです。
公共工事で儲かるための積算術|「この単価は?」にAIが即回答
Q. 公共工事を受注すれば、それだけで儲かるのですか
公共工事は利益を取りやすい一方で、落とし穴もあります。
国の主導で労務単価が上がり工事金額も上がっていますが、同時に外注費も上がっています。受注単価の上昇に原価管理が追いつかない会社は、結局利益が出なくなっています。
Q. 原価管理でよくある問題は何ですか
よくあるのは、感覚に頼った原価計算をしてしまうことです。
「昔から同じ業者に頼んでいるので外注費を見直していない」
「この単価が相場だと思い込んでいた」
といったケースが典型です。
適切な発注金額を把握できていることこそが、建設会社としての価値です。いくら公共工事を受注できても、原価管理ができていなければまったく意味がありません。
Q. 「この単価は?」にAIが即回答するとは、どういう仕組みですか

「RAG」と呼ばれる仕組みを使い、AIが社内のベテランの代わりになるイメージです。
「この工種の適切な単価は?」と質問すると、AIエージェントが社内のデータベースを検索し、過去の実績データから適切な金額を回答してくれます。
Q. AIエージェントを使うと、原価管理はどう変わりますか
ベテラン社員の頭の中にある原価感覚や過去の発注履歴、協力会社からの見積もりなどを、会社全体で使える仕組みにできます。
そのためには、社内データを収集・蓄積し、AIエージェントに読み込ませることが必要です。
Q. AIが参照するデータベースは、どのように作るのですか
過去の見積書や積算データ、文書データを整理し、AIが検索しやすい形で蓄積していきます。
各担当者のPCにバラバラに眠っていたデータを1か所に集約することで、AIが活用できるようになります。これが、いま最先端の建設会社が取り入れているAIの活用方法です。
公共工事に参入するには?経審と資格者がカギ
Q. 公共工事に参入するうえで重要な指標は何ですか
公共工事を受注していくうえでは、経営事項審査(経審)のスコアが重要になります。
経審で算出される「P点」によって、入札できる公共工事の請負金額が決まります。P点の計算式の中でもとくに重要なのが、X1の完成工事高(売上)、Zの技術力、Wの社会性です。これらをいかに上げていくかがカギになります。
Q. 経審の「技術力(Z)」は何で評価されるのですか
技術力(Z)は、資格者の数で測られます。
そのため、資格者を増やす取り組みは受注力アップに直結します。
Q. P点が上がると、受注できる工事はどう変わりますか

P点が上がると、入札参加資格のランクが上がり、受注できる工事の金額帯が大きく広がります。
大阪府の土木工事を例に見てみます。
- Aランク(1,150点以上):1億3,000万円以上の工事にもチャレンジ可能
- Bランク(900点以上):9,000万円未満の工事に入札可能
ランクアップには資格者と完成工事高の積み上げが欠かせないため、計画的に取り組むことが大切です。
施工管理技士の新受験資格で資格者を計画的に増やす
Q. 施工管理技士の一次試験の受験資格はどう変わったのですか
令和6年度から施工管理技士の受験資格制度が大きく変わり、一次試験の入り口が大幅に広がりました。
- 1級:19歳以上であれば受験可能(学歴・実務経験不問)
- 2級:17歳以上であれば受験可能(学歴・実務経験不問)
旧制度では学歴に応じた実務経験が必要でしたが、その要件がなくなりました。
Q. 二次試験の受験資格はどう変わったのですか
1級の場合、一次試験に合格した後に「特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験」が必要になりました。
つまり、20年の実務経験を持つベテランであっても、1級を取得するには一次試験合格後に最低3年の実務経験が必要です。
以前は実務年数さえあれば一次試験も二次試験もそのまま受験できましたが、新制度では一次試験合格後の実務経験が求められます。
Q. 新受験資格制度に対して、会社はどう備えるべきですか
「誰に・いつ・どの資格を」取得してもらうのか、会社としてロードマップを持ち続けることが重要です。
受験できる人の母数は広がりましたが、一次試験合格後の実務経験が求められるようになりました。計画的に取り組めるかどうかで、3年後・5年後の資格者数、つまり受注力に差がつきます。
Q. 公共工事への参入は、組織にどのような影響を与えますか

公共工事への参入を決めて受注を増やす目標を立てると、組織化が進み、好循環が生まれます。
どの資格をどれだけ取るのか、誰が入札・積算管理・工事管理・請求を担うのかといった体制の整備や役割分担が明確になります。
公共工事は大変というイメージを持たれがちですが、建設業の基本が詰まっています。施工計画書の作成やKY活動の徹底などが自然と整っていきます。
その結果、若手が体系的に学ぶ機会が増え、ベテランの勘に頼っていた部分が誰でも再現できる仕組みに変わります。そうして育った人材がさらに受注力を高め、好循環が回り始めます。
人材不足だからこそ、公共工事を増やす目標を持つことが、会社の組織化につながるのです。
なぜ今、建設会社の公共工事参入が注目されているのか
Q. 建設業界の倒産件数はどのくらい増えていますか
昨年の建設業の倒産件数は2,021件で、前年度から6.9%増えました。2,000件を超えたのは12年ぶりのことです。
さらに、2025年の物価高による倒産件数は全業種で949件あり、そのうち240件を占めた建設業が最も多い業種でした。インフレの影響を最も強く受けているのは建設業界だといっても過言ではありません。
Q. 資材価格はどのような状況ですか
建築資材物価指数は総合で147.5となり、前年より4%上昇しています。ナフサショックや中東情勢の影響も重なって資材価格は高騰しており、下がる気配はまったく見えません。
とくに鉄骨・木材・コンクリートを中心に高止まりが続いています。土木関連は上昇幅がとくに大きく、原価を圧迫する状況が続いています。
Q. 建設業の人手不足はどのくらい深刻ですか
建設業の従業者数は現在477万人です。1997年のピーク時の685万人と比べると、約3割減の水準まで落ち込んでいます。
年齢構成を見ると、55歳以上が37%を占める一方で、29歳以下は12%にとどまります。29歳以下の従業者数は、過去20年で88万人から56万人まで減少しました。
Q. これらのデータから何が読み取れますか
倒産件数の増加、資材価格の上昇、人手不足という3つの指標が同時に悪化しており、建設業は構造的に利益が圧迫される局面に入っています。
これが建設業のリアルです。だからこそ、民間工事だけに頼らず、インフレに強い公共工事を収益のポートフォリオに加えることが重要になっています。
まとめ|公共工事参入・資格者戦略・AI原価管理でインフレに備える
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公共工事が国主導の労務単価引き上げによってインフレに強いビジネスモデルになっていること。
民間工事だけに頼らず、公共工事を収益のポートフォリオに加えることがカギになります。
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施工管理技士の新受験資格制度を活用すれば、計画的に資格者を増やせること。
ランクアップや人事戦略を計画的に進められるかどうかが、3年後・5年後の会社の競争力を左右します。
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外注費や原価の見直し。
AIエージェントを活用し、適切な金額を算出できる会社の仕組みをつくりましょう。
インフレ対策のカギは、公共工事の受注、資格者戦略、AIによる原価計算の組み合わせにあります。この3つをセットで取り組むことで、インフレに負けない体制を整えていただければと思います。
公共工事への参入や建設業のAI活用について詳しく知りたい方は、お気軽に船井総研までお問い合わせください。
船井総研の公共工事・公共インフラ支援部では、公共工事の入札戦略から経審対策、AIソリューションの導入支援まで一気通貫でサポートしています。




