技術承継にAIを使う。ベテランのノウハウと売れている営業の型を会社に残す方法

  • 建設・AI活用
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執筆者船井総研 製造・建設支援本部
コラムテーマ
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「あの人がいないと分からない」。建設会社には、そんな仕事がたくさんあります。現場の段取り、見積の勘所、お客様とのやりとり。長年の経験で身についたノウハウは、ベテランの頭の中にあります。
ベテランが引退する前に、そのノウハウを会社に残したい。多くの経営者が考えていることですが、実際には進んでいない会社がほとんどです。
本コラムでは、AIを使ってベテランのノウハウと、売れている営業の型を会社に残す方法を解説します。

技術承継が進まない3つの理由

ノウハウを残す取り組みが進まないのには、理由があります。
1.ベテランが忙しい:現場を任されているベテランほど忙しく、マニュアルを書く時間がありません
2.言葉にしにくい:経験で身についた判断は、本人にとっては当たり前で、言葉にするのが難しいものです
3.書いても使われない:時間をかけてマニュアルを作っても、分厚くて読まれず、更新もされません
AIは、この3つの理由をそれぞれ解決する手助けになります。

会話からノウハウを引き出す

ベテランに「マニュアルを書いてください」と頼んでも、なかなか進みません。そこで、書いてもらうのではなく、話してもらいます。

進め方

1.聞き手が質問する:若手や事務の担当者が、ベテランに仕事の進め方を質問する。「この現場で、最初に何を確認しますか」「見積で、どこに一番気をつけますか」
2.会話を録音する:スマートフォンで録音するだけで構いません
3.AIで文字にして整理する:録音を文字に起こし、AIに手順やポイントごとに整理させる
4.ベテランが確認する:AIがまとめた内容をベテランに見てもらい、間違いや足りない点を直す
ベテランは話すだけ、確認するだけなので、負担が大きく減ります。AIは、話の中から手順、判断の基準、注意点を取り出して整理するのが得意です。

質問の例

分野

質問の例

施工管理

着工前に必ず確認することは? 職人さんに段取りを伝えるとき、何に気をつける? よくあるトラブルとその防ぎ方は?

見積・積算

図面のどこを最初に見る? 見落としやすい項目は? 金額を決めるときの判断の基準は?

営業

お客様との最初の会話で何を聞く? 他社と比べられたとき、どう説明する? 契約が決まる瞬間はどんなとき?

売れている営業の音声から、育成マニュアルと提案の型をつくる

営業のノウハウを残す方法として、効果が出ているのが、売れている営業担当者の商談の音声を使う方法です。
実際に、営業担当者2名の体制だった建設会社で、案件が増えて営業の育成が必要になったとき、売れている営業の音声をもとに、AIで育成マニュアルと提案書を作った例があります。

進め方

1.商談を録音する:お客様の了解を得たうえで、売れている営業担当者の商談を録音する
2.AIで分析する:どんな順番で話しているか、どんな質問をしているか、お客様のどんな言葉で話が進んだかを整理させる
3.育成マニュアルにする:商談の流れ、質問の例、よくある反論への答え方をまとめる
4.提案書の型にする:よく使う説明や資料の構成を、提案書のひな形にする
売れている営業の話し方は、本人も意識していないことが多いものです。音声を分析すると、「最初の10分でお客様の不安をすべて聞き出している」「価格の話は最後にしている」といった、再現できるポイントが見えてきます。

残したノウハウを「使われる」形にする

ノウハウを文書にしても、使われなければ意味がありません。AIを使えば、残したノウハウを使いやすい形にできます。
· 社内のQ&Aにする:まとめたマニュアルをAIに読み込ませ、若手が質問すると、資料のどこに書いてあるかを示しながら答えてくれる仕組みにする
· 短く要約する:分厚いマニュアルを、現場で見られる1枚のチェックリストにする
·更新を簡単にする:新しい現場の経験を話して録音し、AIで追記の案をつくる
特に、社内のQ&Aの仕組みは、「先輩に聞きにくい」「先輩が忙しくて聞けない」という若手の悩みを解決します。

気をつけること

AIでノウハウを残すときは、次の点に気をつけましょう。
· 最後は人が確認する:AIは、話の内容を取り違えたり、もっともらしい補足を加えたりすることがあります。必ずベテラン本人が確認します
· お客様の情報の扱い:商談の録音には、お客様の個人情報が含まれます。会社が認めたAIツールだけを使い、社内のルールに沿って扱います
· ベテランへの敬意:ノウハウを残すことは、ベテランの価値を会社が認めることでもあります。協力してくれたことへの感謝を伝え、取り組みの目的を共有しましょう

ノウハウを残す取り組みのチェックリスト

□ 引退が近いベテランと、その人にしか分からない仕事を書き出したか
□ 話を聞く担当者(若手、事務など)と、質問の一覧を用意したか
□ 録音の方法と、データの保存場所を決めたか
□ AIで整理した内容を、ベテランが確認する流れをつくったか
□ 商談の録音について、お客様への説明の言葉を決めたか
□ まとめたマニュアルを、社内Q&Aなど使われる形にしたか
□ 新しい経験を追記する、更新のルールを決めたか

よくあるご質問

Q. ベテランが協力してくれない場合はどうすればよいですか?
A. 「自分の仕事がなくなるのでは」と不安に感じている場合があります。目的は、ベテランの仕事を奪うことではなく、若手を育て、ベテランの負担を減らすことだと伝えましょう。話すだけ、確認するだけで済むことも伝えると、協力してもらいやすくなります。

Q. 商談の録音について、お客様にどう説明すればよいですか?
A. 「打合せの内容を正確に記録し、ご要望の聞き漏れを防ぐため」と説明すると、了解を得やすくなります。録音したデータの扱いについても、社内のルールを決めておきましょう。

Q. どの分野から始めればよいですか?
A. 引退が近いベテランの分野や、人によって品質の差が大きい仕事から始めるのがおすすめです。また、新人が最初につまずく仕事のマニュアルから作ると、すぐに効果が出ます。

Q. 若手は、残したノウハウをどう使えばよいですか?
A. 分からないことがあったら、まず社内Q&Aで調べ、それでも分からないときにベテランに聞く、という順番にします。調べてから聞くことで質問の質が上がり、ベテランの説明も短く済みます。調べた内容が足りなかった場合は、マニュアルに追記していきましょう。

まとめ

ベテランのノウハウは、書いてもらうのではなく、話してもらってAIで整理すると、負担なく会社に残せます。売れている営業の商談の音声からは、育成マニュアルと提案の型をつくれます。残したノウハウは、社内のQ&Aなど使われる形にすることが大切です。ベテランが引退する前に、今から始めましょう。
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執筆者 : 船井総研 製造・建設支援本部

船井総研の製造・建設支援本部は、建設業界に特化した経営コンサルティングを行っております。コンサルティング事業で培ってきた成功モデルを武器に、ほぼすべての業種・テーマをカバーしております。経営に関するお悩みを幅広く解決いたしますので、是非お気軽にご相談ください。