最近、DXに続いて「AX」という言葉を目にするようになりました。AXは、AIトランスフォーメーションの略です。
DXとAXは何が違うのか。建設会社にとって、AXとはどんな取り組みなのか。言葉だけが先に広がり、中身がよく分からないという方も多いと思います。
本コラムでは、AXとは何か、DXとの違い、建設会社が目指す姿を解説します。
AXとは
一般的に、AXとは、組織がAIの技術を事業の中心に取り入れ、業務の進め方、組織の文化、事業の仕組みを根本から変えていく取り組みを指します。
船井総研では、建設会社のAXを、次のように考えています。
単にAIを使うことではなく、「人にしかできない領域」と「AIを活用する領域」をはっきり分け、AIを使って、人が人にしかできない仕事に集中できる会社にすること。
ポイントは、AIを入れること自体が目的ではないということです。人が本来やるべき仕事に集中できるようにすることが目的です。
DXとAXの違い
DXとAXの違いを、表で整理します。
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項目 |
DX(デジタルトランスフォーメーション) |
AX(AIトランスフォーメーション) |
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中心になるもの |
デジタルの道具(クラウド、システム、データ) |
AI(生成AIなど) |
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主な変化 |
紙や手作業をデジタルに置きかえ、情報を管理・共有する |
文章・資料・判断の下書きなど、考える仕事の一部をAIに任せる |
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人の役割 |
情報を入力・管理する |
AIの出したものを確かめ、判断する |
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例 |
図面の電子化、クラウドでの情報共有、勤怠のシステム化 |
録音から議事録を作る、過去の見積から下書きを作る、写真から報告書を作る |
DXとAXは、別々のものではありません。DXで情報をデジタルにし、置き場所を整えておくことで、AIがその情報を使えるようになります。DXはAXの土台です。
建設業のデジタル化の流れ:CAD、BIM、そしてAI
建設業のデジタル化を振り返ると、AXの意味がよく分かります。
1980〜90年代:CAD「手書きからの解放」
製図台がデジタルの道具に置きかわり、図面の修正や複製のコストが大きく下がりました。人が線を引く作業を、コンピュータが補助する時代です。
2000〜2010年代:BIM「管理のデジタル化」
3Dのモデルに、コスト、素材、工程などの情報を合わせて持たせ、設計・施工・維持管理のデータを一つにまとめられるようになりました。人が情報を入力・統合し、コンピュータが管理して見えるようにする時代です。
2025年〜:AI「思考の拡張と代替」
単純な作業だけでなく、デザインの検討、パースの作成、複数の案の比較といった、考える領域の一部をAIが担うようになりました。AIが複数の選択肢を生み出し、人が方向を決める時代です。
この流れで見ると、AXは、建設業のデジタル化の次の段階です。CADやBIMが図面と情報の扱い方を変えたように、AIは考える仕事の進め方を変えようとしています。
建設会社が目指すAXの姿
建設会社のAXが進むと、次のような変化が起きます。
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課題 |
AXで目指す姿 |
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技術者が足りない、仕事が人に依存している |
施工管理技士や建築士のノウハウをAIで共有し、限られた人数で現場に対応する |
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生産性と工期 |
見積、積算、工程管理を効率化し、手戻りや遅れを減らす |
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提案力 |
完成イメージの作成や提案書の作成が速くなり、提案の質とスピードが上がる |
そして、生まれた時間を、お客様との対話、現場の判断、若手の育成など、人にしかできない仕事に使います。
AXの進め方の全体像
建設会社のAXは、大きく3つのステップで進めます。
1. AI研修:全社員がAIとの対話の仕方と、任せてよい仕事の見極め方を身につける
2. AXロードマップの作成:業務を棚卸しし、人の領域とAIの領域を分け、AI化の優先順位とツールを決める
3. AIガイドラインの作成:情報の漏えいを防ぐなど、AIを安全に使うための社内のルールをつくる
研修で使える人を育て(攻め)、ガイドラインで安全を守り(守り)、ロードマップでその2つをつなぎます。
AXに取り組む前のチェックリスト
□ AXの目的(人にしかできない仕事に集中する)を、社長の言葉で説明できるか
□ DXの土台(情報のデジタル化、置き場所、共有の仕組み)がどこまでできているかを確認したか
□ 紙、個人のパソコン、USBメモリにある情報を把握したか
□ 会社の課題(技術者不足、属人化、生産性、提案力)のうち、どれを優先するかを決めたか
□ AI研修・AXロードマップ・AIガイドラインの3つのステップの時期を決めたか
□ 推進の担当者と、社長との定例の打合せの頻度を決めたか
□ 既に導入しているツール(Microsoft 365、Google Workspaceなど)を一覧にしたか
□ 最初の6か月で目指す状態(例:全社員が日常的にAIを使う)を決めたか
□ 効果を測る指標(作業時間、利用率など)を決めたか
よくあるご質問
Q. DXが進んでいない会社でも、AXに取り組めますか?
A. 取り組めます。生成AIは、パソコンやスマートフォンがあればすぐに使えます。ただし、情報が紙やUSBメモリにばらばらに保存されていると、AIで活用できる範囲が限られます。AXと並行して、情報の置き場所を整えていくことをおすすめします。
Q. AXは大企業向けの取り組みではありませんか?
A. むしろ、少ない人数で多くの仕事を回している中小の建設会社にこそ効果があります。社長の判断ですぐに動けるため、取り組みのスピードも速くなります。
Q. AXで、最初に成果が出やすいのはどこですか?
A. 議事録、メール、お知らせ文、報告書の下書きなど、文章を作る仕事です。全社員が日常的に行っている仕事なので、効果を実感しやすく、AIを使う習慣づくりにもつながります。
Q. AXに取り組むと、どんな会社になれますか?
A. 記録・書類・連絡はAIが手伝い、社員はお客様との対話や現場の判断、若手の育成に時間を使える会社です。情報が整理され、担当者が替わっても同じ品質で仕事が進むようになります。結果として、少ない人数でも多くの仕事を受けられる会社に近づきます。
Q. AXの取り組みは、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 研修・ロードマップ・ガイドラインの土台づくりは、6か月〜12か月ほどが目安です。その後は、ロードマップに沿って2〜3年かけて、業務の仕組みを段階的に変えていきます。最初の半年で日常的に使う習慣をつくることが、その後の進み方を左右します。
まとめ
AXとは、AIで仕事の進め方を変え、人が人にしかできない仕事に集中できる会社にする取り組みです。DXが情報をデジタルにして管理する取り組みだとすれば、AXは考える仕事の一部をAIに任せる取り組みで、DXはその土台になります。CAD、BIMに続く建設業のデジタル化の次の段階として、研修・ロードマップ・ガイドラインの3つのステップで進めましょう。
船井総研では、建設会社の経営者様を対象に、無料経営相談を行っています。自社のAXの進め方や、DXとの組み合わせ方について、お気軽にご相談ください。



