系統用蓄電池のビジネスモデルとは?収益の仕組み・市場動向・参入のポイントをQ&Aで解説

  • 環境・エネルギー
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執筆者岡 慶和
コラムテーマ新規事業参入
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再生可能エネルギーの導入が進むなかで、いま注目を集めているのが系統用蓄電池のビジネスモデルです。太陽光発電のように発電した電気を売る事業とは異なり、系統用蓄電池は、電気をためて価値の高いタイミングで放電し、複数の電力市場を活用しながら収益を上げる事業です。
出力2MW・容量8MWhの高圧規模を前提にすると、投資額は5〜7億円程度が目安となり、実質利回り16.3%を見込むモデルケースもあります。
こうした収益性を背景に、系統用蓄電池は新たな投資テーマとして関心を集めています。  

本稿では、系統用蓄電池ビジネスとは何か、どう収益を生むのか、今後の市場変化にどう向き合うべきか、オーナーとして何を押さえるべきかを船井総合研究所の岡慶和が解説します。
これから参入を検討する経営者や、事業性を見極めたい方に向けて、全体像をつかみやすい形でまとめました。 

系統用蓄電池ビジネスとは?

Q. 系統用蓄電池ビジネスとは、どのような事業ですか

系統用蓄電池ビジネスとは、電気の充放電によって収益を出す投資ビジネスです。
電力価格が安い時間帯に系統から電気を買って充電し、価格が高い時間帯に放電して売ることで差益を得ます。考え方としては「安く買って高く売る」モデルであり、電気を対象にした運用型ビジネスと理解するとわかりやすいでしょう。  

Q. 一般的には、どのくらいの規模の設備を指すのですか

一般的なモデルは、出力2MW・容量8MWhの高圧規模です。
必要な土地の広さは240坪(約800㎡)以上が目安で、主な設備として電池コンテナ、パワーコンディショナー、キュービクル、トランスなどを設置します。家庭用や小規模な自家消費用蓄電池とは異なり、事業用のインフラ設備として考える必要があります。  

Q. どのくらいの投資が必要になるのでしょうか

この規模の系統用蓄電池設備は、5億円〜7億円程度が投資額の目安です。
ひとつのモデルケースとしては、投資額を5億5,100万円と置いて収益性を試算できます。単なる設備購入ではなく、収益構造や回収期間を踏まえて判断すべき本格的な事業投資といえるでしょう。 

なぜ今、系統用蓄電池が注目されているのか

Q. なぜ今、系統用蓄電池ビジネスへの関心が高まっているのですか

太陽光発電の導入が進んだことで、昼間の電気が余りやすくなり、従来の売電モデルだけでは伸び悩みが起きやすくなっています。
そこで、余った電気をためて別の時間帯に活用できる系統用蓄電池が、課題解決の有力な手段として注目されています。再エネの拡大が進むほど、蓄電によって需給を調整する価値は高まっていきます。 

Q. 電力会社にとっても必要性が高まっているのでしょうか

必要性は高まっています。
自然由来の電気が増えるほど、発電量の変動を吸収できる電源や設備が求められます。短時間で充放電できる系統用蓄電池は、こうした需給調整の役割を担えるため、電力系統全体の安定化にとって重要な存在になっています。 

Q. 今は参入しやすいタイミングなのでしょうか

いまは、系統用蓄電池ビジネスを検討する意義が大きいタイミングだといえます。
再生可能エネルギーの導入拡大に伴って、電力の需給を調整できる設備の重要性は高まっており、系統用蓄電池への期待も強まっています。
加えて、市場はまだ導入期にあり、先行者メリットを得やすい局面にあります。補助金の活用余地があることも、事業化を後押しする要素です。  

一方で、今後は市場環境の変化も見込まれるため、単に「伸びている市場だから参入する」と考えるのではなく、いまのうちに事業性を見極めることが重要です。どの条件なら成立するのか、どのパートナーと組むべきかを早い段階で整理できる企業ほど、優位に立ちやすいと考えられます。  

系統用蓄電池の収益の仕組み

Q. 系統用蓄電池は、どのように収益を上げるのですか

系統用蓄電池は、卸電力市場、容量市場、需給調整市場という3つの市場を活用して収益を最大化します。
それぞれの市場には異なる価値があり、卸電力市場では電力量、容量市場では供給力、需給調整市場では需給バランスを調整する能力が収益源になります。ひとつの市場に依存するのではなく、複数市場をまたいで運用することが、このビジネスモデルの中核です。  

Q. 卸電力市場とは何ですか

卸電力市場とは、実際の電力量の売買差益を取る市場です。
安い時間帯に電気をためて、高い時間帯に放電することで収益を確保します。電力価格は時間帯やエリアによって変動するため、その価格差を活用することが基本になります。  

Q. 容量市場とは何ですか

容量市場とは、将来の供給力に対価が支払われる市場です。
いま売電するのではなく、将来必要なときに電力を供給できる能力そのものが評価されます。
言い換えれば、将来の安定供給に貢献できる電源としての価値に対して収益が発生する仕組みです。そのため、容量市場は収益の安定性を支える要素のひとつといえます。  

Q. 需給調整市場とは何ですか

需給調整市場とは、電力の需要と供給のバランスを短時間で調整する能力に対価が支払われる市場です。
再生可能エネルギーの導入が進むほど、発電量の変動は大きくなり、需給バランスをきめ細かく調整する必要性も高まります。系統用蓄電池は、その変動にすばやく対応できるため、需給調整市場で価値を発揮しやすい設備です。  

Q. なぜ需給調整市場がそれほど注目されているのですか

需給調整市場が注目されているのは、系統用蓄電池ビジネスの中でも特に大きな収益機会を持つ市場だからです。
卸電力市場や容量市場に比べて収益インパクトが大きくなりやすく、事業全体の魅力を押し上げる要因になっています。単に電気を売買するだけでなく、電力系統の安定化に必要な調整力そのものを収益化できる点が、この市場の大きな特徴です。  

系統用蓄電池ビジネスは本当に儲かるのか

Q. 収益性はどのくらい期待できるのでしょうか

系統用蓄電池ビジネスでは、一定の高収益が期待できます。
ひとつのモデルケースとして、投資額5億5,100万円に対して、表面利回り25.9%、実質利回り16.3%を見込むことができます。
さらに、20年間の合計営業利益は12億4,800万円、営業利益率は40%となる計算です。もちろん実際の収益は市場環境や運用条件によって変動しますが、有望なビジネスとして注目される背景には、こうした収益性の高さがあります。もちろん実際の収益は市場環境や運用条件によって変動しますが、系統用蓄電池が有望なビジネスとして注目されている理由のひとつは、こうした収益性の高さにあります。 

Q. 補助金の活用余地もあるのでしょうか

補助金の活用余地はあります。
系統用蓄電池ビジネスは、国や自治体の支援策を受けられる可能性があり、導入期の事業として取り組みやすい条件がそろっています。高い利回りが期待できることに加えて、こうした補助制度を活用できる点も、参入を後押しする要素のひとつです。事業性を検討する際には、収益モデルだけでなく、利用可能な支援策もあわせて確認しておきたいところです。 

今後の市場動向は系統用蓄電池の収益にどう影響するのか

Q. 今後の市場動向で、特に注意すべきことは何ですか

今後の大きな論点は、需給調整市場の上限価格見直しです。
一次・二次①の上限価格は、19.51円/ΔkW・30分から、2026年度以降、段階的に下がっていき、最終的には7.21円/ΔkW・30分へ見直される見通しです。これまでの高単価を前提とした収益環境がそのまま続くわけではないため、事業性を考えるうえでは、この変化を前提に見ておく必要があります。

Q. 単価が下がると、やはり厳しくなるのでしょうか

収益性は下がる可能性があります。
ただし、一気に事業として成立しなくなるわけではありません。価格見直しによって利益水準は圧縮されるものの、一定の事業性は維持できる余地があります。重要なのは、これまでの好条件を前提にするのではなく、見直し後の市場環境を踏まえた現実的な収益ラインで判断することです。  

Q. それでも投資対象として成立する余地はあるのでしょうか

成立する余地はあります。
単価見直し後であっても、投資額に対して一定期間で回収できる可能性は残ります。
だからこそ、これからは「高収益だから参入する」のではなく、市場環境が変化した後でも成立する案件かどうかを見極める視点が欠かせません。  

系統用蓄電池オーナーが取り組むべきこと

Q. オーナーとして、最初に何をすべきですか

最初に取り組むべきことは、完成物件を購入することです。
土地探しから始めて自社で一から開発する方法もありますが、その分だけ時間とリスクが大きくなります。すでに案件として販売されている物件を活用するほうが、現実的に事業を立ち上げやすくなります。  

Q. なぜ完成物件の購入が勧められているのですか

完成物件の購入は、開発リスクと時間を大きく減らせる方法だからです。
一から土地を集めて進めるよりも、進め方がシンプルでわかりやすく、初めて参入する企業でも取り組みやすいのが特徴です。  

Q. アグリゲーターとは何ですか

アグリゲーターとは、卸電力市場、容量市場、需給調整市場での運用を代行する事業者です。
どの市場でどのように運用するかによって収益は大きく変わるため、系統用蓄電池ビジネスの成果を左右する重要な存在です。 

Q. アグリゲーター選びで大切なことは何ですか

アグリゲーター選びでは、利回りシミュレーションの見栄えだけで判断しないことが重要です。
大切なのは、良い数字を示せるかどうかだけではなく、蓄電所の開発や建設を含めた知識と実務理解を備えているかどうかです。数字をきれいに見せるだけではなく、実務まで理解しているパートナーを選ぶ必要があります。  

Q. 実際に運用開始までどのくらいかかりますか

完成物件を購入した場合でも、運用開始までの目安は約9か月です。
契約してすぐに売上が立つわけではなく、一定の準備期間が必要になります。そのため、利回りだけでなく、立ち上がりまでのスケジュールも含めて判断することが大切です。  

Q. 案件を探す方法としては、どのようなものがありますか

案件を探す方法としては、展示会に参加して物件情報を集める方法が有効です。
展示会では複数の事業者から提案を受けられるため、物件やシミュレーションを比較しながら投資判断を進めやすくなります。情報収集の入口として、こうした場を活用する意味は大きいでしょう。 

ここまで見てきたように、系統用蓄電池ビジネスでは、物件選定、アグリゲーター選び、収益シミュレーション、運用開始までのスケジュール設計など、検討すべき論点が多岐にわたります。
とくに、用地選定や許認可、事業計画の組み立てまで含めて具体化しようとすると、自社だけで判断しきれない場面も少なくありません。そうした場合は、系統用蓄電池ビジネスの立ち上げ支援 のように、用地選定から事業計画、許認可申請、建設、運用までを一気通貫で整理できる情報を確認しながら、現実的な進め方を検討するのも有効です。 

まとめ|系統用蓄電池ビジネスモデルをどう見るべきか

系統用蓄電池のビジネスモデルは、電気を安く買って高く売ることを基本にしながら、卸電力市場・容量市場・需給調整市場の3つを活用して収益を上げる事業です。
再生可能エネルギーの拡大を背景に市場は伸びており、モデルケースとしては実質利回り16.3%を見込める水準です。一方で、2026年以降の市場単価見直しを踏まえると、今後は従来以上に前提条件を慎重に見極める必要があります。  

重要なのは、単に「儲かるかどうか」だけで判断しないことです。
どの物件を選ぶか、どのアグリゲーターと組むか、どの前提で事業性を見るかによって、結果は大きく変わります。完成物件の活用、運用開始までの期間、運用パートナーの選定まで含めて考えることが、経営判断として欠かせません。  

系統用蓄電池を検討するなら、まずは仕組みを正しく理解し、そのうえで市場環境の変化を織り込んだ現実的なシミュレーションで判断することが重要です。
事業化に向けてさらに具体的に検討したい場合は、無料経営相談をご利用ください。用地選定から事業計画、許認可申請、建設、運用まで、実行段階で必要になる支援内容を把握できます。 

執筆者 : 岡 慶和

大学卒業後、大手地銀に入行。地元と東京の支店を経験し、主に中小・中堅企業を担当。法人では融資業務に加え、「ビジネスマッチング」、「事業承継」などを幅広く経験している。 船井総研入社後は前職の経験を活かして「法人営業」・「財務分析」等に注力したコンサルティングを行っている。